山本ゆりさん連載コラム 物が捨てられない話1「いつか使うかもしれない編」

ここ何年もずっと、世の中は片づけ&断捨離ブームだ。いや、ブームではなくて一生続く課題なのだろう。私も片付けの本を読んではやる気を出し、徐々にモノを減らしてはいる。服も半分以上捨てたし、食器も減らしたし、靴もカバンもバンバン捨てた。でも、あの雑誌に載っている部屋のようにスッキリ!!棚スカスカ!!からは程遠く、見えていないところは基本ギュウギュウだ。まだ捨てられるものがあるはず……!と何度も見直すが、捨てられない。全然使っていなくても、一切ときめかなくても、捨てられないものは存在するのだ。

ダイニングテーブルの横にある食器棚。ここはメインの食器棚に入らなかったものが入っている。引き出しの1段目には小皿やとんすい(小鉢)など普段から使う食器がぎっしり、3段目には撮影用の布や缶、箱やストロー、コースターなどがワサッ!!と入っているのだが、2段目……ここがまだ減らす余地がある部分だ。

来客用の5つ揃ったマグカップ、椅子の脚の滑り止めカバーの予備、植木鉢の水受け?底にあたる部分、蓋つきの空瓶、お土産でもらった鍋敷き、耳栓、なんかの部品、何を入れる予定もないけどオシャレなワイヤーのカゴ……、カオスだ。全部捨てても普通に生活は回る。でも、あると生活が少し豊かになる。(耳に栓ができたり、植木鉢に底をつけたりできる)

ワイヤーのカゴに関しては捨てたところで生活に1ミリも支障はない。それは認める。使ったことないもん。網目がでかすぎて何をいれても落下するし、何をいれることを目的として作られたもんかもわからない。でも……ちょっとオシャレだ。

なんかちょっと、ジャストサイズの植物みたいなものを入れてポンッと棚においたらオシャレな気がする。購入時もそう思って買ったのだ。そのジャストサイズの植物みたいなものはどこにあるんですか?って聞かれたら答えられないし、ジャストサイズがどのくらいなのかもわからない。ポンッと置く棚も見当たらない。だいたい「植物みたいなもの」って何?世の中には2つしかないやろ。植物か、植物以外かだ。

すべてにおいて中途半端なこのカゴ、はよ捨ててしまえよと思うのだが、まあ、カゴ自体別にそんなに邪魔でもない。そこに収まっていて害はないわけだし、とりあえず保留だ。

では次、なんかの部品。謎の部品やコードは捨ててOKだと本には書いてある。即捨てだ………。待って、ほんまに大丈夫?部品やで?これがないと使えないものがこの家のどこかに存在するかもしれんで?「なんかこの機械、動かんねんけど……部品が外れてるわ。部品知らん?」となった時に「あ、捨てたで」と言えるだろうか。「なんでやねん!」と喧嘩が勃発するんじゃないか。素人が部品の必要性を勝手に判断するなど危険だ。保留!

最後に引き出しの左奥にある紙の箱。上に食器がのっかっており、普段開けることがない。普段っていうか、おそらくこの家に引っ越してきて6年、一度も触っていない。問答無用で捨てていい案件だ。「2年使わないものは捨てよ」と言われている片付け業界において6年使っていない、いや使っていないどころか何が入っているかもわかっていないものなんて、捨てる以外の選択肢はあるだろうか。

確実に捨てる方法は、中を見ないことだ。箱を開けずに、そのままゴミ箱にGO。でも……もしかしたら大事なものかもしれない。「大事なもんなら6年放置されてへんがな!」と私の中のこんまり先生(関西版)がささやいたが、一応みてみることにする。

なにこれ。

なにこれ

なんやのこれ。

なにこれ

中身をみてもなお「なんやのこれ」と思ってる時点でもう120%捨ててOKなのだが、一応、再度よく見てみる。

これは…!

これは!

WECKの蓋や…!!

蓋

え、可愛い~!

WECKというのはこのガラス容器だ。

ガラス容器

今では死語かもしれないが「インスタ映え」が流行した2015年ごろ一世を風靡したジャーサラダやスコップスイーツとともに大流行したもので、この蓋は当時、製菓材料の通販サイトcottaさんの「WECKと暮らそう」という企画で頂いたことを思い出す。

その企画以来、WECKと暮らしてはいる。ゼリーやプリンの容器の代わりにしたり、手巻き寿司の時のきゅうりを差すコップとして利用したり。しかし一度も蓋をしたことがない。蓋なんて存在自体忘れていたし、蓋が必要な時はラップをしていた。だからといってこれから先、蓋をしないと言い切れるだろうか。これまでは思わなかったからといって、突然蓋がしたくなる可能性はゼロではないだろう。その時に買えばいいじゃない、と、片付けマスターの方は言う。限りなくゼロに近い可能性のために物を置いておくなんてムダだ、と。確かにそうだ。もしどうしてもWECKに蓋がしたくなったら、楽天で検索して500円ほどで購入すればいいだけの話だ。

でも、もう手遅れだ。なぜなら私は蓋の存在に気づいてしまった。この蓋を捨ててからWECKに蓋をしたいと思ったら、「そういえば持ってたな……(ゴソゴソ)……あれ?!ない!あ!あの時捨てたんや……!!うわーもったいな!!なんで置いとかんかってん、アホー!」と発狂するだろう。一度捨ててしまったものを再度買う、そんな悔しいことがあろうか。その際の予算は蓋代の500円に、捨てた分の蓋代500円、さらに精神的ダメージとして500円ほどがプラスされ、計1500円となって心にズーンとのしかかる。そもそもこの蓋、そんなに場所とってないしな。蓋の置き場所なんてたかがしれてるわ。こんな10×5cmくらいのスペースが空いたところでスッキリするわけでもなし、とりあえず保留にしとこ。

……って、なんも捨ててへんやないか!!!!

いつもこうだ。結局あれこれ想像し、言い訳をつけてもとに戻してしまう。こんなことではいけない……!物に執着してはいけないんだ……!!と、決死の覚悟でWECKの蓋を持ち、眺め、別の場所に保管した。(なんやねん)そしてワイヤーの網目でかすぎカゴをもち、ついに「小型複雑ごみ」用のボックスにいれたのだ。やった!勝ったぞー!

小さなスペースが空いた。これだけでも、わずかに心に余裕ができた気がするから不思議だ。片付けってこういうものなのかもしれない。

だが、「いつか使うかもしれないもの」以上に捨てられないモノがある。それについては、また次回に。

山本ゆりさんに用意していただいた
オリジナル最新レシピを紹介
よみファ クッキング

とろとろネギベーコン卵グラタン

ブリの塩ガーリック焼きレモンバター


山本ゆり プロフィール
料理コラムニスト。大阪生まれ&在住。著書「syunkonカフェごはん」シリーズ(宝島社刊)など著書は累計約700万部。最新刊「syunkonカフェごはん7 この材料とこの手間で「うそやん」というほどおいしいレシピ」ほか、「syunkonカフェ どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本」(扶桑社刊)など。新刊エッセイ「syunkon日記 おしゃべりな人見知り」(扶桑社)が発売中。
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ブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』